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原子力発電所向タービンの製造(シーメンス社)

オルキルオト原子力発電所は世界最大かつ最新の原子力発電所で、出力は1,600MW、名だたるドイツの技術力をもって成り立っています。シーメンスにおけるタービンの最終組み立て時は、ローターにブレードを取り付け、ハウジングに組み込んだ状態で計測が行われました。これは最大効率とブレード・ハウジング間の安全間隔のバランスを取る作業で、0.1mm単位の精度が求められます。

オルキルオト1および2原子力発電所。3号機は2009年に稼働開始予定で、人口160万人の都市に必要な電力をまかないます。

全長12m以上、直径6.7mのこの蒸気タービンは、現在、フィンランドのオルキルオト3原子力発電所への設置を前にして、最終工程を待っています。低圧タービンの自立型ブレードは、体積や重量が大きいにも関わらず0.1mm単位の精度でアライメントが取られます。「これらのブレードの決め手は、ハウジングとの間隔です。」そう語るのは、シーメンス社発電事業部のプラントエンジニア、シュテファン・ヘインク氏です。タービンとハウジングの隙間はできるだけ小さくしなければなりません。この隙間が大きければ、蒸気がそれだけ逃げてしまい、効率が低下します。タービンブレードがハウジングに触れると破損してしまうので、いかなる状況下でも接触は許されません。

レーザートラッカー導入により効率が向上

「計測システムが正確であればそれだけブレード同士の間隔誤差は小さくなり、効率が向上します。」とシュテファン・ヘインク氏は説明しています。したがって、少なくとも0.1mmの精度を維持できることが新しい計測システムに対する要求でした。いくつかのテストの結果、シーメンスはAPIの Omnitracを採用しました。決め手となったのは、その使いやすさ、そして、わずか8.5kgという軽量性と携帯性です。最終組み立て時にハウジングを計測する場合はレーザートラッカーを3〜5mの高さにセットしなければなりませんが、軽量のシステムであれば、このような作業での取り扱いははるかに容易です。建設現場でもレーザートラッカーの使用が計画されています。たとえば、発電所のハウジングの再計測が必要となった場合などです。

アプリケーションに適したソフトウェアとの結合

シーメンス社にはタービン計測用に、取り扱いの簡単な専用ソフトウェアがあり、トレーニングを受けていない従業員でもレーザートラッカーを使用することができます。この計測システムは、異なるオペレーターがシステムを操作してさまざまなブレードを計測しても、再現性を確保できるようになっています。これは、厳密なプログラムシーケンスにより、ユーザーはステップバイステップで計測タスクを進めていくことができるからです。このソフトウェア上での計測ルーチンは、 APIとシーメンス社との密接な協力のもとに開発されました。ソフトウェアとハードウェア、ブレード計測用にカスタムメイドされたプログラムを提供するというAPIの提案がシーメンス社のシステムに対する要件を完全に充たしたのです。

適用範囲の広さ

レーザートラッカーは、ブレードの計測だけに使われているわけではありません。軸方向の距離やハウジングの直径を計測する場合にも大きな威力を発揮します。高さ 36cmというコンパクトなサイズにより、希望通りの位置にセットすることが可能です。水平方向±320°、垂直方向+65〜−60°の回転範囲により、遠距離にある大型構造物の計測にも適しています。Omnitracは計測距離60mの認証を受けており、シーメンスにおいてはNIST基準で精度 10ppm、距離40mの計測を行っています。シュテファン・ヘインク氏が説明するように、レーザートラッカーの使用範囲に境界線はありません。シーメンスはAPIレーザートラッカーに非常に満足しており、すでに、将来API Intelliprobe 2ハンドヘルドセンサーの購入を検討しています。同社は今後もAPIと密接に連絡を取り続けるでしょう。ヨーロッパでAPIの存在感が増していること、 2007年にドイツのマンハイムにオフィスが開設されたことによって、その傾向はさらに強まっています。

ブレードの計算を行うオペレーター。レーザートラッカーのヘッド部分は大きく回転させることができるので、離れたところにある大型構造物の計測も可能です。